2012年9月27日木曜日

Adobe のソースコード用フォント「Source Code Pro」を試してみた

Adobe からオープンソースでプログラミングに特化したというフォント「Source Code Pro」がリリースされました。リリースを報じるニュースを見るとかなりコダワって作ったフォントだということで、ためしに使ってみました。

まずは、私が常用している、 Inconsolata での端末画面です。Ubuntu / Debian ではパッケージが用意されていて、

$ sudo apt-get install fonts-inconsolata

でインストールすることができます。システムで使われているフォントを全部入れ替えるのも悪くはないのですが、元々の標準フォントの Ubuntu ファミリーのフォントも ( プログラミングに適しているかどうかは抜きにして ) 味があるので、端末にだけ設定してみたのがこちらです。 ( スクショにポインタが残ってしまったのはご愛嬌ということで勘弁してください )
Inconsolata を使った「端末」画面
Inconsolata を使った「端末」表示例


次に今回の Adobe の新作 Source Code Pro を使って同じ文面を表示させてみました。こちらはリリースされたばかりですので、こちらからダウンロードしたものを、~/.fonts に配置して「端末」のフォント設定を変えてみました。

Source Code Pro での「端末」表示例
Source Code Pro での「端末」表示例
こちらはサンセリフっぽいテイストで文字の高さがより低くデザインされている違いがあるのですが、数字の「1」が他の文字と調和して「L」の小文字の「l」と読めてしまうように思えます。また、「i」がかなり個性のあるデザインなのですが、シチュエーションによっては「j」や「t」のように誤読しそうにも思えます。

文字幅が等幅 ( monospace ) であったり、「L」の小文字と大文字の「I」数字の「1」のようなまぎらわしい字型のものがそれぞれ区別されているというのはプログラミング用のフォントとしては最低限欲しい仕様なのですが、それ以上の突っ込んだ使い勝手についてはあまりレビューされていなかったんではないかと感じざるを得ません。結局個人的にはちょっと試して元の Inconsolata に戻してしまいました。

おまけで、Ubuntu Monospace でも同じ文面を表示させてみました。
Ubuntu Monospace での「端末」表示例
Ubuntu Monospace での「端末」表示例
こちらはどちらかというと Ubuntu らしさが漂う感じになりました。「e1elent」の部分はハッキリと「数字が混入している」違和感が出ています。

個人的に Inconsolata の存在を知ったときに実用性に驚いてずっと使ってきたのですが、Source Code Pro はオープンソースフォントだということで、改良が進むことに期待したいところです。

Nexus 7 が国内でも購入できるようになりました

Google の Andorid タブレット Nexus 7 が日本でも購入できるようになりました。

そして、この Nexus 7 に合わせて、Google Play ブックスがオープンしたことがアナウンスされました。

突然の記者会見


Nexus 7 販売開始に合わせて Google が記者会見を行ったのですが、その模様を岡田有花さんが ITMedia で記事にしています。

Androidの強みは「オープン性」、「競合よりはるかに速く成長」――Googleシュミット会長が来日 〜 ITMedia

余談になりますが、この岡田有花さんの記事でのシュミット会長の写真につけられたキャプションが気になります。
Nexus 7を手にするシュミット氏。約15分間のプレゼンテーション中は常に台本のような紙を持ち、時折目を落としながら話していた
 岡田有花さんも直接本人に確認したわけではないので「台本のような」と断定した言い方は避けていますが、拡大写真を見ると確かに脇に抱えた紙に
with each app being like extra blades on Swiss Army knife. And that means ...
We recently launched a tablet in the US and Europe called the Nexus 7 ____ ____ what is possible when hardware and software combine with 
(NEX)US7 - SLIDE WITH NEXUS 7 APPEAR
といった文字が読み取れるような気がします。 Google はオープンにすべきものはオープンにする一方で、自身のビジネスに関する部分は徹底的に秘密主義を貫くことが知られていますが、良い悪いは別として、こういった台本を手にトップエクゼクティブがプレゼンをするというのも非常に興味深いものがあります。

Nexus 7 登場の意義


さてこの Nexus 7 ですが、日本で発売が開始されたことはこんな意義があるのではないかと思います。
  • 「Google 公式の」タブレット端末である
  • 本を読むという体験に関してようやく iOS に並びかけた
  • 中華端末の価格的メリットが少なくなった
 先日発売された Ubuntu Magazine vol.09 では中華端末視点での記事になりましたが、Nexus 7 が市場に登場したことでもう一度掘り下げてみたいと思います。

( 余談ですが個人的には海外から取り寄せていて、手元に届くタイミングによっては記事でも一部触れる予定でしたがバックオーダー状態になってしまい Nexus 7 が手元に届いたのは脱稿後になってしまいました )

「Google 公式の」タブレット端末である


Ubuntu Magazine の Android 特集でもちょっと触れましたが、真面目に Android 開発をしようと思った時にネックになることとして「まっとうな開発端末を手に入れる」ということがあります。

今まではどうしても Android 端末は「携帯電話・スマートフォン」という前提があったため、キャリアが販売することが前提になっており、月々の契約が必要になったり、キャリアによる時としてお節介になりがちなカスタマイズが施されローカル色の強い端末を使わざるを得ず、また「公式のNexus端末」は日本ではごく一部の例外機種を除いて販売されてこなかったので、手に入れようとすると海外から取り寄せなければならないという開発者(ガジェットギークも含めて?)泣かせの事情がありました。Nexus 7 については1か月くらい前から秋葉原のショップで見かけることがありましたが、自力で送料をかけて輸入する価値があるほどのプレミアム価格がつけられていた事情もありました。

標準的な位置づけの端末が国内で簡単に購入できるようになったということは開発者にとっては大きな福音になるのではないかと思います。

本を読むという体験に関してはようやく iOS に並びかけた


そして、「Google Play ブックス」です。iPad を使う用途の一つとして「電子書籍を読む」ということがありますが、ようやくそれに近いことができるようになりました。「なんとなく便利そうなモノ」から「少なくとも電子書籍を読むことができるモノ」に進化したことは大きいのではないかと思います。

この Google Play ブックスは ヘルプによると Android 2.2 以降で Google Play ストアアプリが導入されている環境 で動作するということなので、Nexus 7 云々はおいておいても、Android ユーザーの 95 % 超の端末で「Google Play ブックス」のコンテンツを利用することができるようになったということになります。

また、国内の電子書籍ということでいうと、楽天の kobo がサービスとしては先行していて、Google の場合はコンテンツの品揃えについて具体的な数字を出しているわけではないものの、著作権が切れた本をデジタル化する「Google Books」の成果が今回の「Google Play ブックス」で利用できることが大きな特徴です。国内では慶応義塾図書館の資料の一部が該当し、検索キーワードによっては、電子書籍に混じって古本屋でしか入手できない資料がヒットして「無料で購入」できるのが非常に興味ぶかいところです。

中華端末の価格的メリットが少なくなった


さらにガジェットギークの方にとっての一番の変化は Nexus 7 の販売価格だと思います。現在 Google Play で 16GB モデルが 19,800 円で販売されていますが、現在 1万円台前半で売られていることが多い中華Androidタブレットとの価格差が圧縮されました。これまで中華端末は
  • 搭載されているOSが新しい
  • 価格的に安い
という2つのメリットがありましたが、Nexus 7 の登場でこのメリットの両方を失ってしまうことになります。公式端末の入手が難しいという状況で一定の支持を得てきた部分があるので、今後どういった展開を見せるのか注目したいところです。

Nexus 7 は買いか?


ということで、Nexus 7 はどんな人が買うべきかということを考えみました。

買うべき人

 
  • Android 開発者
  • 最新のAndroid OS を使いたい人
  • タブレット製品に興味があったけども購入にふんぎりがつかなかった人
 

それほど気にしてなくてもいい人

 
  • 単に Android で本を読みたい人 ( Google Play ブックスは Android 2.2 以降の端末で動きます )
  • 中華タブレットをバリバリ使っている人 ( Android 4.0 → 4.1 はそれほど目を見張る新機能はありません。地味に見えがちな改良点がたくさんあるのも事実ですが )
  • カメラアプリを使いたい人 ( アウターカメラついていません! )
  • Wifi インターネット接続環境を用意できていない人 ( Nexus 7 単体では Wifi のみです。すでに ISP各社がセットプランを発表しているので、それに乗るのも一つの手段かもしれません )

2012年9月18日火曜日

Ubuntu で Boogie Board RIP をペンタブレットとして使う

みなさんこんにちは。
Ubuntu Magazine Japan vol.09 (AA) はご覧になっていただけたでしょうか?

実はその Ubuntu Magazine の脱稿直前の最終修羅場局面で、突如 Boogie Board RIP が秋葉原のお店で 2,500 円で売られるという状況が発生し、関係者がこぞって秋葉原で Boogie Board RIP をゲットするという出来事が起きました( その後何度か在庫が消えては復活しているようです。またこの記事を書いている時には SOUTHTOWN 437 さんが Amazon で 2,980円で販売しているようです(AA) )。

この Boogie Board RIP ですが、地味に Windows 向けにペンタブレットとして使うためのソフトウェアが公開されていて、関係者の間では自然に Linux(Ubuntu)ではどうなんだろうという議論になったのですが、タブレット上の位置情報を取得した blog 記事がある ( Oliver Migeot さん, Mark Johnson さん ) という話題になりました。

ちょうど私もRIPをこのタイミングでゲットしたので試してみたところ、確かに位置情報が取得できることを確認しました。あとは「誰かがドライバを書けばなぁ」ということになるのですが、カーネルツリーを調べてみると、タブレットの入力デバイス用のデバイスドライバを書くこと自体はそれほど難しくないようだということがわかったので、Boogie Board RIP をペンダブとして動かすドライバを書いてみました。ソースファイルは github.com に、また Ubuntu デスクトップ環境向けに DKMS PPA を準備してみました

導入はこんな感じで行います。
$ sudo add-apt-repository ppa:hchonan/boogie
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install boogie-dkms
また、 DKMS というのは Dynamic Kernel Module Support の略で、カーネルがアップデートされた際にも自動的にカーネルモジュールのビルドとインストールが行われる仕組みの PPA となっています。

なお、x.org 側は汎用の入力ドライバー evdev を使う前提にしています。標準の Ubuntu デスクトップ環境であれば evdev は設定も含めて標準でインストールされていますので、DKMS PPA を導入し、Boogie Board RIP を USBポートに挿せば即使うことができる(はず)です。実際のところ感圧は感知しないので非常に惜しい感が漂いますが、このくらい安く手に入れることができればオマケ感覚で使ってみるのもよいかもしれません。

とはいえ、十分にテストしているようなものではないので、あくまで自己責任で、また動かしてみてどんな感じだったかをお知らせいただければ幸いです( 手元の環境ではでは Ubuntu 12.04 LTS デスクトップ版を新規インストールした直後に DKMS PPA を導入して動作を確認しました )。