2012年10月1日月曜日

あめが同じ数ずつはいったふくろ

ある朝起きたらなぜか身長がものすごく縮んでいた。何が起きたのかよく分からなかったが、母親(なぜかものすごく若い。何があったんだ?)が血相変えてやってきて、とっとと学校に行けとうるさい。あたりを見るとランドセルが転がっていて、小学2年の教科書やらノートやらが入っている。うーん、どうやら俺は小学2年の頃にタイムスリップしているようだ。

どうしてこんなことになったのかまだ頭の中が混乱しているけど、学校に行かないと母親にヒドイ目に逢わされそうなので、しかたなく小学校に行った。

なんとか小学校についたけど遅刻ギリギリで状況を把握する前に授業が始まった。朝から算数の授業で、しかもいきなりテストらしい。

なんてこったっと思って朝起きてからのことを振り返ってみたが、冷静にみるとテスト自体はそんなに難しくはないようだ。が、最後の問題がやたら難しいぞ。えーと何だって ...... ?

( Twitter @suetsumu_hana さんの twitpic から )

活用する力をみる問題
あめが同じ数ずつはいったふくろがいくつかあります。あめぜんぶの数は 8×5 のしきでもとめられます。つぎの中で正しいものには○、正しくないものには×をつけましょう。
  • あめのふくろはぜんぶで8つあるね。
  • あめは1ふくろに8こずつはいっているね。
  • あめのふくろはぜんぶで5つあるね。
  • あめは1ふくろに5こずつはいっているね。

えーと、あめが8個ずつ入った袋があって、それが5袋だったら、かけられる数が8でかける数が5だから 8×5 で ... ってどうして式が書いてあるんだ?

いやまてよ、左上になんか不吉なことが書いてある。「活用」とかにふりがながついていなくて、しかも習った漢字じゃないけど、こういうものがある問題はものすごくイジワルで気を付けないといけないんだった。この間もこういう問題で騙されたし、こういう問題ができないと大人になったときに困るって言われたっけ。

うーん、うーん、よくみると袋の中のあめの数から 8×5 の式が出てきたとは書いていないなあ。ここ最近ずっと算数でかけ算を習ってきたので、袋の中にあめが8個入っているように考えるのが自然なんだけど、「活用する力をみる問題」で騙されちゃいけない油断できない問題だ。本当は4個入り10袋とか2個入り20袋とかで、8×5 の式は罠かもしれない。

とすると、あめの袋は必ずしも5袋とは限らないし袋にあめが8個入っているとも限らない。ツインテやおさげの女の子や前髪ぱっつんやワイルドな男の子はみんな大人に騙されかけてるんだ! 「正しくないものには×」と書いてあって、「まちがっているものには×」ではないから、「4つとも×」だ。とっとと書いて提出...... うわ、なんでいきなり頭が痛くなるんだ......

え?なんだって?ものすごく歳の離れたお兄ちゃんのような人がアドバイスしている気がする...

 「今の立場をよく考えるんだ。やたら正義のヒーローっぽくなりたい君の担任が『どのような答えが欲しいのか』を。君が今ものすごく苦労して出した答えが正しいことはずっと後で気が付くことになるけど、 君の担任は理解できない。君の担任も実は大人の世界で生きている人間の一人で先生達の間での『お約束』に縛られている。 絶対的に正しいことを書くのではなく、その時々にどのようなことを求められているのか考えるのはとっても大事だ。『4つとも×』にいきついた考え方も忘れないでいて、今は担任の立場を考えて、8個×5袋で答えを書くんだ。」

はっ、頭は痛くなくなったけど、なぜか、あの正義感丸出しの担任がこっちを睨んでいる。しかたないな、「4つとも×」は勘弁してやるか。そもそもなんで小学2年にタイムスリップしたのかわからないがとりあえず目の前のテストを提出してからゆっくり考えよ......あれ、なんだかものすごく眠いぞ......



うわっ、これ夢か。しかしヒドイ夢だったなあ。いまどきの社会では小学2年生のテストを読むのにも「リテラシー能力」やら「クリティカルシンキング」やらの能力が必要になったのか。ある意味きびしい世の中だなあ。

でも俺達が小さいときのことを思い出すと当時とはあまり変わっていないよなあ。ゲームやらマイコン(組み込み分野ではなく当時はPCもそう呼んでいました)やBASICやらの話題は絶対に学校の先生には理解できないことだったし、だからこそ、そういった話題はある種俺達の秘密の楽園のような存在だったよなあ。最近ではITについての事柄も学校で教えるようになったけど、ITの知識が市民権を得られて喜ぶべきか「楽園」じゃなくなったことを悲しむべきか微妙なところなのかもね。

(このお話はフィクションです。多分きっと)