2010年8月24日火曜日

OpenSolaris OGB 総辞職動議可決

先月の OGB 決議から 1 か月が経ち、約束の期限を迎えました。この間にも Illumos 立ち上げの発表や、Oracle の内部のリークメモの流出、そのリークメモの内容を裏打ちする、ON コードベースの更新停止と、日々混乱状態にある OpenSolaris コミュニティですが、先の決議の期限明けの OGB 会議が月曜朝 ( カルフォルニア現地時間 ) に開かれました。

この会議に先立って公開された Agenda や各方面の状況を総合すると OGB の解散は不可避な状況にあるのではないかと個人的に感じていましたが、やはりその方向に進んでしまいました。

[ogb-discuss] Motion concerning dissolution of the OGB
http://mail.opensolaris.org/pipermail/ogb-discuss/2010-August/008012.html
( 以下拙訳を掲げます )
今朝のOGBの会議で、Plocher が作成しPhipps が賛同した以下の動議が、全会一致で (悲しいことであるが) 採択された。

-John Plocher
(前) OGB 議長

OGB の解散に関する動議

(Whereas) Oracleは、OGB と共に OpenSolaris の開発とコミュニティの将来について働く連絡役を指名するという要求を無視し続けており、

(Whereas) Oracleは、 2010 年 8 月 13 日に従業員に対して、Oracle と OpenSolaris コミュニティの間の開発パートナーシップを一方的に終結させるというOracleの決定を強いる内容のメールを配布し、

(Whereas) OpenSolaris の開かれた開発 に対して Oracle の継続した支持と参加がない限り、OGB と Sun/Oracle が作ったコミュニティが開かれた Solaris 開発パートナーシップを支持するということは意味をなさなく、

(Whereas) OpenSolaris コードベースの開かれた開発を続けることについての願望と熱狂は明らかにOracleの (述べてきたように、このコミュニティの) 手から離れ、他のコミュニティに渡された。

(決議文) OpenSolaris Govering Board はここに一括して辞任し、OpenSolaris 憲章 1.1 ( および規約 1.3.5 ) の規定により OGB を選任する責務が Oracle に渡ることを示す。
これにより、現在 OGB のメンバーは誰一人として存在しない状況となりました。決議文後半の部分については、 OpenSolaris 憲章や規約において、 OGB の定員が 3~7 名であり、欠員が生じたり OGB 選挙が 14 か月実施されなかったり OGB そのものへの不信任等といった事態が生じた場合には、Oracle(Sun) が一時的に補填メンバーを指名し、臨時選挙を実施する旨の条項があることを踏まえた形となっています。

今後、現在と同じ形での OGB や OpenSolaris コミュニティを維持するためには、Oracle が OGB 補填員を指名し、臨時選挙を行い新しい OGB 体制を構築する必要がありますが、現在までの経過を見る限り現在の Oracle がそういった行動をとることは想像できなく、事実上の OGB の解散・解体ということになるかと思われます。また OGB は OpenSolaris の色々なコミュニティを統括してまとめあげる位置づけの組織ですので、残念ながらこの決議は OpenSolaris コミュニティの解体をも意味するのものであると受け取らざるをえない状況となっています。

ここにきて、OpenSolaris を構成するとされている 3 つの要素について
  • コードベース - onnv-gate の更新が停止される ( 先のリークメモを裏打ちする内容 )
  • ディストリビューション- リークメモによれば OpenSolaris としてのディストリビューションは公開されない
  • コミュニティ - OGB 総辞職動議により事実上解体
と、プロジェクトとしての OpenSolaris は終結してしまったと言わざるをえない状況になりました。もちろん Oracle としては次期 OS である Solaris 11 の開発を進め、Nextenda をはじめとした OpenSolaris 派生ディストリビューションや、ON の代替となるであろう Illumos などがあるので、 Solaris 系の OS の譜系が完全に途絶えるわけではありませんが、このようなハードランディングと言っていい手法でプロジェクトを終結させてしまった点については将来に遺恨を残しそうです。

2010年8月4日水曜日

Illumos Project のアナウンス

Oracle による Sun 買収から混迷状態が続いている OpenSolaris コミュニティですが、日本時間の 8 月 4 日未明に Illumos Project が 電話会議および Web セミナーでプロジェクトの発表を行いました。発表の内容については Illumos Project Announcement のページにてスライドと音声が利用できるようになっています。

この Illumos ですが、OpenSolaris の基本部分である OS/Net (ON) に対して、コミュニティ主体で完全オープンソースの派生プロジェクトとし、特定企業への依存を排しコミュニティとしてのアイデンティティを保ち、ディストリビューションを作るための最小構成相当のものをリリースすることを目標に掲げています。8 月 4 日の発表では vmware 環境上でのデモも披露され、環境は限定されるものの起動できる状況まで進んでいるようです。

現行の OpenSolaris ON は、確かにコードベースの大部分についてはオープンソースとしてソースコードが公開されていますが、いまなおソースが公開されていないコンポーネントが存在し、そのコンポーネントのバイナリがないと ON のビルドができない状況にあります。また、外部の開発者がコードを寄贈しようとしても権利関係の手続き ( SCA 署名 ) を行った上でバグ登録を行い、メーリングリストで議論するところまではできたものの、実際にコードベースに反映するのは旧 Sun の従業員だという事情もあり、オーナー企業の方針に左右されやすいという問題も内在していました。

また、ON についてのこういった問題は現在すでに派生プロジェクトとなっている Nexenta, BeleniX, Schillix, berliOS といった派生OSのプロジェクトメンバーにとっても重大な問題となっていたのではないかと思います。

Oracle による買収の後、OpenSolaris コミュニティへの Oracle のかかわりが非常に希薄となっている現状 ( その一つの表れが前日の OGB 決議の件だと思います ) での今回の発表ですが、Webサイトやスライドの端々にそういった状況を打開しようとする意図が読み取れ、Illumos のサイトにはロゴの隣に リンカーンよろしく "Of the Community, By the Community, For the Community" と書かれています。現状に不満を言うのは簡単なことですが、それにとどまらず何をやるべきかを考えることが重要だという強いメッセージを個人的に感じました。今後の OpenSolaris がどの方向へ進んでいくのかということを考えるにあたり、この Illumos の動向は非常に重要になってくるのではないでしょうか。