2013年3月19日火曜日

【書評】 Ubuntu Server 実践バイブル (アスキー・メディアワークス) 吉田 史 著

2013/4/9: 達人出版会による電子書籍版の販売が開始されました

なぜ「大風吹けば桶屋が儲かる」のかを解説する、Ubuntu Server実践者必携の1冊


ASCIIのIT分野向け「黒表紙本」シリーズに登場した、待望のUbuntu Server向けの解説本がこの「Ubuntu Server 実践バイブル」だ。これまでも国内で使われる著名なオープンソースOSでは網羅的な入門解説本が出版されてきたが、本書はUbuntu Serverでの定番入門解説本と位置づけられる1冊だ。

最近出回っている雑誌記事や解説本ではどちらかというと「AをするためにはBをCする」といった逆引き的・即物的なノウハウを集めたものが多いのが実情だが、本書ではインストール法や設定法以外に「なぜそういうことをすると後々得をするのか」といった、「現場で効く」ノウハウや考え方が随所に織り込まれているのが特徴だ。

理論的な部分や考え方にまで踏み込んだ解説書はどうしても教条的で「読んでいて眠い」ものとなりがちだが、本書では実践に重点をおき「ユーザが知っておくべきことはなにか」をターゲットとして書かれているため、ライブ感あふれる良い緊張感を保つことに成功している。

本書を参照しながらUbuntu Serverをインストールし、手を動かし、その意味を考えることを続けていけば、ひととおり読み終えるころにはUbuntu Server構築のエッセンスを身につけることができる。そしてそのスキルはUbuntu Serverに限定されるものではなく、他のLinuxディストリビューションやBSD、UNIX系のOSにも応用できるものとなるだろう。

また、すでにエキスパートになっているユーザにとっても、本書のコラムやノート部分のトピックは現場での作業を改善するヒントになるのではないだろうか。そういった部分からインスピレーションを受けるという点で、ASCIIが刊行していた雑誌「UNIX Magazine」を彷彿とさせる読書感がある。

現在のUbuntu Serverは、少ない操作で目的を達成できるという点で非常に実践的なサーバOSだが、本書はそれに呼応した実践的な解説本だ。一度読んだら本棚に収めるのではなく、常に現場に持ち込んで付箋紙を貼りまくりボロボロになるまで読み倒して欲しい、おすすめの1冊だ。

(株式会社アスキー・メディアワークス 佐藤 様よりご献本いただきました。ありがとうございました。)

2013年3月6日水曜日

オープンソースカンファレンス 2013 Tokyo/Spring 参加ご報告

みなさんこんにちは。

もう先月のことになってしまいましたが、「オープンソースカンファレンス 2013 Tokyo/Spring」に参加して参りました。

今回は Ubuntu Japanese Team のメンバーとして、ブースとセミナー講師をさせていただきました。

動画とスライド資料はこのような感じです。




今回のセミナーで用意した題材は

  •  Stallman vs Ubuntu
  •  Ubuntu Web App

についてのお話でした。総じて「活用法」というところから離れた内容になってしまったのがちょっと残念ですが、特に Stallman vs Ubuntu のお話は気にしている方が結構いらっしゃるので避けて通れない話題だったのではないかと思います。

ユーザのプライバシーをどのように扱うのかというのはUbuntuに限ったものではなく、いろんなところで話題になっている問題です。結局のところ「CoC に署名したメンバーが開発している」というところが非常に緩い拠り所になるというお話をさせていただきました。

この辺の事情について、もしかしたら「厳格なルールを決めればよいのでは?」と考える方もおらっしゃるかと思いますが、ルールを決めたとしても破られるときには破られる(経緯はありますが OpenSolaris などはその例かもしれません )わけで、結局のところ各々の良心に頼るしかないという事情もあるのではないかという思いをこめて資料を作っていました。

後半の Web Apps では、謎の「松屋」なモックアプリを作って駆け足ながら内容の解説を行いました。ちょっと商標的に非常に微妙なところでどうかとも考えた ( 松屋以外に候補として、NHK NewsWeb の最新ニュースを通知領域に流すのも作ってみていたりします ) のですが、 変に実用性が出るとそれはそれで微妙なことになりそうだなと思い苦慮の末にあのような形になりました。特に公開しないのであればいろいろ作ってみると楽しいのではないかと思います。

Web Apps については、単なるWebスクレイピングプラットホーム以外の愉快な使い方が出てくるのを期待したいところです。

前日の突発インストール大会(?)


と、ここまでが一応事前に準備していた内容なのですが、えてして世の中は無情でして、イベントの前日にタブレット・スマホの開発者向けイメージが公開されるという告知が流れ、Canonical以外の人間にはまったく事前情報が流れてないまま、気がついたらイベント前日には手元に転がっている Nexus をじっとみつめる状況となりました。

地方のイベントならともかく、東京だったらみんなこの辺りの情報はチェックしていて、ブースでいろいろ聞かれるに決まっています。結局もうイケるところまでイってしまえということで、大(=Nexus10)中(=Nexus7)小(=Galaxy Nexus)そろえてインストールして持って行きました。

その結果いろんな方に実機に触れてもらい、挙句の果てに ascii.jp で記事を書かさせていただきました。

タブレットでもスマホでも使える『Ubuntu Touch』を入れてみた

Ubuntu Phablet ( Phone + Tablet の造語 ) がどのような展開を見せるのかはまだまだ見通せない部分が多いのですが、新しい分野として今後も見逃せないのかもしれません。

ともあれ、現地にてブースを訪れてくださいました方、セミナーに参加していただいた皆様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。今後も(主にUbuntu Japanese Teamのメンバーの忙しさやら諸々が影響するかと思いますが)見かけたら立ち寄っていただければ幸いです。