コンソール環境の整備しよう
さくらのVPSでは、VPSのシリアルポートをコンソール端末として使用できる「リモートコンソール」と、ディスプレイとキーボード相当に相当する「VNCコンソール」が利用できますが(現在「VNCコンソール」はベータ版扱いでまだ公式なものではありません)、このコンソール環境についても標準OSである CentOS の時と同じようにブートローダーやログインできるように整備しておくと、いざというときに役にたちそうです。
「リモートコンソール」からログインできるようにしよう
ということで、VPSのシリアルポートに相当する「リモートコンソール」でログインできるようにしてみたいと思います。UNIX や Linuxマシンでは端末を監視するのに getty という仕組みを使い、 getty は OS が起動した直後に実行される init で実行されます。Ubuntu 10.04 では init の挙動を /etc/init ディレクトリの設定ファイル群で指示する形になっています。実際に /etc/init の中をのぞいてみると、tty1.conf や tty2.conf といったファイルがあるのが確認できるかと思います。この設定ファイルにならってシリアルコンソール用の設定を作ります。最初のシリアルポートは /dev/ttyS0 ですので、/etc/init/ttyS0.conf を以下の内容で作成します。
# ttyS0 - getty # # This service maintains a getty on ttyS0 from the point the system is # started until it is shut down again. start on stopped rc RUNLEVEL=[2345] stop on runlevel [!2345] respawn exec /sbin/getty -8 115200 ttyS0といっても、デバイスと通信速度以外は tty1.conf と一緒なので、
# cd /etc/init # cp tty1.conf ttyS0.conf # vi ttyS0.conf ( 速度を 115200, デバイスを ttyS0 に変更するよう内容を編集 )というふうにすると良いでしょう。ファイルの作成が終わったらVPSを再起動すると「リモートコンソール」にも Login: プロンプトが出現し、ログインして作業できるようになります。
「リモートコンソール」でブートローダも制御できるようにしよう
これで、「リモートコンソール」でログインできるようになりましたが、VPSの電源投入時や再起動時に VNC コンソール同様にリモートコンソールブートローダの制御も行えるようになるとさらに安心できそうです。これは Ubuntu が起動するまでの部分ですので、さきほどの getty や init ではなく、ブートローダの設定を変更することになります。VPSの標準OSの CentOS では grub v1 が採用されていましたが、 Ubuntu では grub も新バージョンの grub v2 が採用されています。 grub 2 になって様々な部分が拡張され、より複雑になってしまいましたが、設定は /etc/default/grub で指定し、各種スクリプトなどを使い、/usr/sbin/update-grub コマンドでそれらを反映させる仕組みとなっています。
今回は標準の CentOS と同じように、リモートコンソールとVNCコンソールの両方で制御を行うことを目標にしますが、現行の Ubuntu 10.04 のスクリプト群では複数のデバイス ( この場合はシリアルポートとディスプレイ ) を入出力デバイスをして使うことは想定されていない状況なので、スクリプトにも手を入れる必要があります。
さしあたり、設定ファイル /etc/default/grub の冒頭の部分を
# If you change this file, run 'update-grub' afterwards to update # /boot/grub/grub.cfg. GRUB_DEFAULT=0 GRUB_HIDDEN_TIMEOUT=0 GRUB_HIDDEN_TIMEOUT_QUIET=true GRUB_TIMEOUT=10 GRUB_DISTRIBUTOR=`lsb_release -i -s 2> /dev/null || echo Debian` GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash" GRUB_CMDLINE_LINUX=""という内容から
# If you change this file, run 'update-grub' afterwards to update # /boot/grub/grub.cfg. GRUB_DEFAULT=0 # GRUB_HIDDEN_TIMEOUT=0 GRUB_HIDDEN_TIMEOUT_QUIET=false GRUB_TIMEOUT=5 GRUB_DISTRIBUTOR=`lsb_release -i -s 2> /dev/null || echo Debian` GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet" GRUB_CMDLINE_LINUX="nosplash console=tty1 console=ttyS0,115200n8r" GRUB_SERIAL_COMMAND="serial --unit=0 --speed=115200 --word=8 --parity=no --stop=1" GRUB_TERMINAL_INPUT="serial console" GRUB_TERMINAL_OUTPUT="serial console"と書き換えてください。ポイントは
- GRUB_HIDDEN_TIMEOUT をコメントアウト
- GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT と GRUB_CMDLINE_LINUX を編集 ( console= は2か所あり、tty0 ではなくて tty1 を指定してください )
- GRUB_SERIAL_COMMAND, GRUB_TERMINAL_INPUT, GRUB_TERMINAL_OUTPUT を新規に作成
- これ以降の部分はそのままに
141 fi 142 fi 143 ;; 144 xconsole | xserial | xofconsole) ;; 145 # *) echo "Invalid output terminal \"${GRUB_TERMINAL_OUTPUT}\"" >&2 ; exit 1;; 146 esac 147 148 # check for terminals that require fonts 149 case ${GRUB_TERMINAL_OUTPUT} inまた、この書き方をするとシリアルポートを使用しないものとみなされ、GRUB_SERIAL_COMMAND の設定内容が無視されてしまうので、/etc/grub.d/00_header の 68 行目について
67 case ${GRUB_TERMINAL_INPUT}:${GRUB_TERMINAL_OUTPUT} in 68 *serial*:* | *:*serial*) 69 if ! test -e ${grub_prefix}/serial.mod ; then 70 echo "Serial terminal not available on this platform." >&2 ; exit 1 71 fi 72 73 if [ "x${GRUB_SERIAL_COMMAND}" = "x" ] ; then 74 grub_warn "Requested serial terminal but GRUB_SERIAL_COMMAND is unspecified. Default parameters will be used." 75 GRUB_SERIAL_COMMAND=serial 76 fi 77 echo "${GRUB_SERIAL_COMMAND}" 78 ;; 79 esacと、serial:* | *:serial) から *serial*:* | *:*serial*) へと変更します(念のため各ファイルについてはオリジナルのものを保存して、元に戻せるようにしておきましょう)。
ここまできたら、update-grub コマンドを root 権限で実行します。
# /usr/sbin/update-grub Generating grub.cfg ... Found linux image: /boot/vmlinuz-2.6.32-24-generic Found initrd image: /boot/initrd.img-2.6.32-24-generic Found memtest86+ image: /boot/memtest86+.bin done #エラーが出ずに正常に更新されたようであれば、再起動してうまくいくかどうか確認します。うまく設定できたら、VNCコンソールの ALT + F1~F6 キーで切り替えられる仮想コンソールの設定について粛清します。tty1 と tty2 だけ残しておけば大丈夫だと思いますので、
# rm /etc/init/tty6 ... # rm /etc/init/tty3と設定ファイルを消して資源の節約をはかっておきましょう。
今回のTips
これで標準のCentOSの時のようにコンソールが使えるようになったかと思いますが、作業についての小技を紹介しておきたいと思います。
- Ubuntu の標準では root ユーザのパスワードが利用できない Ubuntu の標準では root のパスワードが利用できない設定となっています。これはパスワードで特権ユーザである root ユーザの利用をするのではなく、資格のあるユーザが必要に応じて root 権限でコマンドを発行することにより事故を防ごうというものです。コマンド実行例ではその部分についてばっさり省略して、root 権限でコマンドを実行することを # プロンプトで示していますが、実際に作業を行う際には sudo コマンドを活用してください。sudo コマンドは
- テキストエディタは何を? 今回はじめてテキストファイルを編集するシチュエーションが出てきましたが、テキストエディタについては詳しく触れませんでした。私はこういったオペレーションをよくやるので、vi や vim などの vi 系のエディタを愛用しています。vi はちょっと癖があってという人は、nano というエディタが Ubuntu の最小構成でも利用できるので、これを使うのが良いと思います。emacs 系のものは最小構成には入っていないので、nano か vi を使ってしばらくは凌いでください :)
$ whoami chonan $ sudo whoami [sudo] password for chonan: (ここでログイン時のパスワードを入力します) root $といったふうにroot権限でコマンドを実行するのに使います。なお、sudo コマンドの詳しい使用方法についてはマニュアルや他サイトの解説を参考にしてください。
次回予告
書きだすとどうしても分量が増えてしまいますが、次回は引き続きインストーラーでカバーされなかった内容の設定について書きたいと思います。