2015年2月19日木曜日

【書評】アトランティド1 (小学館/少年サンデーコミックス) 山地 ひでのり 著


「王道」をスチームパンクで味付けた痛快冒険活劇


みなさんは「王道」と聞いて何を連想するだろうか。剣と魔法が登場する狭義の「ファンタジー作品」だろうか、それとも世界をまたにかけた冒険作品だろうか。そしてもしかしたら「王道」であるが故にそういった作品を遠ざけていたりはしないだろうか?

「アトランティド」はさまざまな神話や伝承などをモチーフとして織り込んだ痛快冒険活劇だ。物語の冒頭から最重要アイテムとして北欧神話〜「ニーベルング」〜「指輪物語」でおなじみの「指輪」が使われたり、アトランティス大陸を思わせる意味深なオーパーツが登場するなど、古くから語り継がれてきたモチーフをスチームパンクの世界観にあわせ見事にアレンジしている。

冒険もので必ず出てくる残虐な描写もスチームパンクの「機械じかけのギミックが壊れる」という形で処理し、あくまで豪快・爽快な読書感を演出することに徹している点や、えてして安直な風合いになってしまいがちなモチーフを迫力のある絵やストーリーのテンポの良さで「強火で調理」する姿勢が光っている。ベースとなるモチーフを知っていたとしても楽しめるのは著者の実力のあらわれであろう。

今後5年、10年と長く続いて親から子へ語り継がれるような、冒険心をくすぐる「定番作品」に成長するのを期待したい作品だ。

( 2015/02/07 に開催された「スチームガーデン 8」会場で、山地 ひでのり先生ご自身からお話をうかがい、Amazonで購入いたしました。楽しいお話ありがとうございました。 )