2011年9月5日月曜日

結晶化するソフトウェア(Jarisそしてffftp)

のっけから悟った風なことを書いてしまいますが、何にでも必ず終わりがやって来るものです。もちろんそれはソフトウェアにおいても例外ではありません。折しもそんな節目を迎えてしまったソフトウェアが最近2つありました。いまさら色々言ったところでどうにかなるようなものでもありませんが、紹介してみたいと思います。

Jaris - 日本製コミュニティベースSolaris


Jaris(ヤリス) は OpenSolaris がプロジェクトとしてまともに活動していた時期に日本向けのコミュニティベースの OpenSolaris ディストリビューションを目指し発表されたプロジェクトで、この blog でも過去に何度か取り上げたことがあります。

以前晋遊舎さんの「Linux 100%」に巻頭特集として取り上げられ大きく注目された経緯がありますが、その後の開発は芳しくなく、昨年の8月には使用していたjaris.jp ドメインが失効し、回復措置期間中 ( 汎用JPドメインの場合失効後 20 日間は手数料を支払うことで回復することができるという制度があります ) に復活するという出来事がありました。

当時の様子についても「まさかの復活」ということで blog 記事に取り上げましたが、1年後となる今年の8月にも再びドメインが失効するという事態に陥りました。もちろんこの1年の間においても Solaris 周辺の情勢はコミュニティのものから企業のものにずいぶん色合いが変わっていった事情もあり、新しい成果物が公開される状況ではなくなったのですが、例の回復措置期間を経過してもドメインが復活しないことから活動を再開するような状況ではなくなってしまったのがうかがえる状況となっておりました。

私は何度か blog で取り上げたものの開発に直接携わっていたわけでもなかったのですが、実はここ最近このblog のトラフィックの相当部分が Jaris についての検索によるページビューが突出している状況もあり、凍結期間明けの9/1早朝に jaris.jp ドメインを取得して最低限のファイル提供などを行おうかと画策しておりましたが、ドメイナーのロボットにあえなく敗れ、SEOのネタドメインにされる運命となってしまいました。さすがに別のドメインを取ってまで巻き取るようなものでもないので、もう完全に終結してしまってよいのではないかと思います。

UNIXっぽいOSとしてならば優秀なOSがたくさんありますし、 Solaris そのものがコミュニティのものから企業のものになってしまった以上、こういう残念な結果になるのもやむなしといったところかと思います。Windows のソフトを動かしたいのであれば Windows がインストールされたマシンを用意するのが一番いいにきまっていますし。

ffftp - Windows用 定番 ftp クライアント


また、「Windows用 定番 ftp クライアント」と紹介されることの多かった ffftp についても、この 8/31 をもって正式に開発を終了する旨の記事が作者さんの blog に掲載され、こちらは作者さんの明確な意思が示された上で開発終了した格好になります。

ffftp については比較的初心者受けしそうな機能が実装されてユーザも比較的スキルが低い層に幅広く使われていたように感じていますが、過去に Gamblar ウィルスの標的にされるという不幸な出来事があったり、色々な環境の変化が最終的に開発終了という結果をもたらしたのではないかと思います。

この件で非常に面白いのは、今回の開発終了のニュースをうけて「ftpというプロトコル自体が〜」とか「代わりに〜を」とか書いている方々がほぼ的外れな内容だったりする件だったりします。個別に何がどうと指摘するつもりは全くないのですが、よくもまあといった印象があります。

この ffftp についてはソースファイルも公開されているわけですが、開発を引き継いでfork する人間はちょっと出てこないのではないかと感じています。

技術的な点や人的リソース的な部分をなんとかしたとしても、現状の ffftp のユーザ層のサポートを考えると無料では誰もやりたがらない気がします。初心者受けしそうな分かりやすい機能を追加していったら、それすら難しいと感じるユーザが増えて結果的にユーザをスポイルしていく方向に働いていってしまったのかもしれません。