2011年9月25日日曜日

Solaris についての個人的な展望

なかなか方向性がみえてこない Solaris まわりでございますが、現地時間の 9/21 に Oracle の四半期決算についての記事が出ていました。記事はオリジナルが


で、日本語の翻訳記事が japan.internet.com に掲載されています。


この記事によると、この四半期は決算的は好調だったそうで、それはなりよりであったのですが、それ以上に興味をひかれるのはその中で引用された CEO の Larry Ellison の言葉です。
"I don't care if our commodity x86 business goes to zero,"

"We don't make any money selling those things. We have no interest in selling other people's IP, and commodity x86 includes Intel IP and Microsoft IP."
この中で出てくる "IP" というのは IPアドレスのことではなくて、知的財産権 ( Intellectual Property ) のことなのですが、知的財産権で ( Oracleが ) 利益が上げることができない分野で、もはやコモディティ ( 日用品 ) 化した x86 でのビジネスには興味ないということを言っています。

CEO である Larry Ellison がはっきりと "IP" という言葉を使ってこのような発言をしたということは大きな意味があって、Oracle としては知的財産権を囲い込めないところではビジネスをやらない( やりたくない ) こと、それこそオープンソースなど糞食らえだというのが本音なのではないかと思わざるを得ません。極端な見方をするならば「Oracle はオープンソースの敵だ」と公言したに等しい感があります。

思い起こせば旧 Sun の製品でコモディティ色のあるものやオープンソース化したものはそれぞれ波乱の時代を迎えています( OpenOffice.org は結局 Apache 財団に、Java では訴訟、Solaris はサーバ志向へ )。

OracleSolaris まわりの展望


そういった事情を踏まえて OracleSolaris がどうなるのかという展望を考えてみたいのですが、現在 OTN ライセンスでプレビュー版ともいえる Solaris 11 EA が提供されて ( 要OTNアカウント ) いますが、対応システムは x86-64 と M もしくは T シリーズの SPARC システムに絞られています。 32bit x86 については Solaris 11 Express からサポートされなくなりましたが、 あらためて Solaris 11 EA を見てみると /kernel 以下の 32bit バイナリが全部粛清されている状況です。

なるほど徹底しているなと感じてユーザランドを見てみると /usr/bin 以下などには相変わらず 32bit のバイナリがそれなりに存在します。

ソースツリーの中でどうなっているのかは憶測するよりほかないのですが、 /kernel 以下のディレクトリ構造が変わっているわけではないので、32bit バイナリが生成されないようにビルドシステムが変更されたのではないかと思います。 これは x86 アーキテクチャの中でもよりコモディティ化している 32bit システムについて戦略的にサポートを落としたということができます。

Solaris 11 EA を見る限りで推測すると、Solaris 11 はリリース当初において x86-64 はサポートされるようですが、中長期的に見た場合には x86-64 もサポートが切られSPARC システム専用になるか、専用のアプライアンスのみサポートするという形になるのではないかと思います。

コミュニティベース Solaris については?


このことはコミュニティベース Solaris にも間接的に影響することで、いわいる「リークメモ」ではOracle Solaris リリース後半年後を目安にソースを公開する方針が謳われていますが、そもそもソースが開示されるのか、開示されたとして SPARC 専用のものになるのではないのかという懸念が考えられます。またライセンス回りについても、Oracle がその気になれば Illumos も OpenIndiana も訴訟でつぶされる可能性を常にはらんでいます。また仮に CDDL ライセンスでパッチなどの貢献を行った場合には Oracle が自身の財産として無制限に使うことができてしまうという問題も生じます。

OpenIndiana ディストリビューションについても同じようなことが言うことができて、 OracleSolaris 互換を目指しているという目標のために、Oracle の動向に足を引っ張られるという事情があります。端的な例は Apache2 についての脆弱性のついての対応で、Bug Ticket が登録されているものの、その内実は
CVE-2011-3192 is a major security problem affecting Apache 2.2. Oracle may have packaged 2.2.21 in Userland or added patches, we should pull this in or update it ourselves.
という状況で登録されたままの状態になっています(脆弱性が報告されて何日経過しましたっけ?)。

「OpenSolaris」 という幻想


では、OpenSolaris とはなんだったのかという議論が生じるのですが、あえていえば

Sun が残した最後の花。しかしもうすでに枯れている

ということができるのではないでしょうか。よく言われる OpenSolaris の三要素「ディストリビューション」「コードベース」「コミュニティ」で見ても、「ディストリビューション」はすでに終了、コードベースについても Oracle が持っているものは公開どころか知的所有権として囲い込み、「コミュニティ」に至っては OGB 解散以降再編の動き無しということで、何ひとつ機能していないことになります。

見かけ上 Illumos/OpenIndiana を「OpenSolarisの後継」と位置づける見方もありますが、Oracle が知的所有権の囲い込みで収益をあげる施策をとるかぎり、Illumos/OpenIndiana が OracleSolaris 互換を維持するのは非常に難しいものになると思います。 結局のところ、これから Solaris を追いかけるということは、プロプライエタリ・ソフトウェアの OracleSolaris を追いかけるということにならざるを得ない状況です。端的に言えば

Solaris が Oracle によって closed にされた以上、 OpenSolaris という言葉は概念的にありえない

ということができましょう。Oracle が Sun 買収後に Solaris に対して起こした(そしてコミュニティを無視し続けた)行動はまさにこの Larry の言葉に集約されているといっても過言はないでしょう。私自身 LiveUSB Creator を書いたりしてそれなりにかかわってきましたが主が変わるとここまで変わってしまうという教訓をだったのかもしれません。

再掲しますが、
"I don't care if our commodity x86 business goes to zero,"
"We don't make any money selling those things. We have no interest in selling other people's IP, and commodity x86 includes Intel IP and Microsoft IP."
この言葉、Larry の ( そして Oracle の ) 本音なのではないでしょうか。国内にも "OpenSolaris" のユーザグループが存在しますが、そろそろ真面目に身の振り先を考えたほうがよいかもしれません(私のような「不良会員」が言うことではありませんが...) 。さもないと「OpenSolaris は Oracle の商標だけど、もう closed にしたからその名前使わないでくれ」とか言われそうな気がします。